「『爆装』している機体だってある!」(『逆シャア』のアムロ)だと思っている人が読む記事
どうも。
前々から、1つ記事にしたいなと思っていたことがありまして。
富野監督の特長の1つに、「黒歴史」を代表に(この言葉が富野監督の創作か否かは・難しいところではあるけれども)、独特の言葉使いがあると思います。
「黒歴史」以外にも、「ニュータイプ」とか。
で、全く話題になっていないけれども、『逆襲のシャア』に出てくるアムロのセリフ「爆装している機体だってある!」も、独特なセンスだと思っていました。
ぼくは『逆襲のシャア』を見るまで、「爆装」という言葉を知りませんでした。
「爆装 意味」とGoogle検索すると、トップに
爆装とは - Weblio辞書 名詞 航空機に爆弾を搭載すること。
と表示されます。
ちなみに手元にある大辞泉(第1版)で「ばくそう」と調べても、「曝葬 死体を山地・原野などに、空気中にさらしておく葬方」しか載っていません。
「飛行機の整備士になりたかった」(読売新聞2017年8月13日)人で、戦闘機にもおそらく知識があるであろう富野監督が、「爆装」の本来の意味を知らないわけがありません。
それでも、語感の良さや・「観客に伝わるだろう」と、アムロに「爆装」と言わせたのだ、この言葉センスよ……という記事を書こうとして、ちょっと思いとどまりました。
本当に「爆装」なのか?
ここがぼくのライターとして優れている所なのですが(仕事くれ)、念のために「アムロ 爆装」でGoogle検索すると、5740件ヒットします。
ガジェット通信の記事「1988年『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』編 押井守の映画50年50本」でも、
アムロに「爆装している機体だってある」と言わせた上で、
と書かれています。
もう間違いない。「爆装」だ。
ただここが、長年ライターとして食べているぼくの……略、仕事くれ。
娘から電子辞書を借りて、「ばくそう」を念のために調べてみた。
明鏡国語辞典(第2版)は「爆走」しか出てこない。
で、広辞苑(第7版)で「ばくそう」を調べると、
爆傷に同じ
と書かれている。……うん?
導かれるまま、「爆傷」を調べると、
火薬・爆弾・砲弾などの爆発によって受ける外傷。爆創
……これだ! あのシーンで言われているのはまさにこの状態、「爆創」だ。「爆装」ではなく「爆創」だったのでは。
いやいや、これは勘違いするよ。
「機体も爆創がある!」とか言ってくれたら、「爆創」を(知らなくても)想像できるかもしれないけれど、
「ばくそうしている機体だってある!」と言われたら、(その言葉を知らなくても・実際そうだったように)「爆装」だな、と思っちゃうでしょ。
ここらへんが富野監督独特のセリフ回しと言うべきか…
勘違いしていたのはぼくだけかと思ったけれども、先のガジェット通信の記事もあるし、
「アムロ 爆創」でGoogle検索すると、
検索条件と十分に一致する結果が見つかりません。
と表示されます。
あなた達も「爆装」だと思っていたよね、ね?
ちなみに新明解国語辞典(第7版)で「ばくそう」を調べると、下記の言葉が載っています。
博捜 たくさんの文献などを根気よくあれこれ調べること
まあ今回調べたのは、「博捜」ってほど根気よく調べたわけではありませんけれども。
おあとがよろしいようで。
※追記
ツイッター上で、「Blu-rayの字幕では『爆装』になっていますよ」とご指摘いただきました。
Blu-ray持っているのに、字幕あるの忘れてた…(そもそも買って、特典映像しか見ていなかった)。
じゃあ脚本上も「爆装」になっているのかな。
ちなみに、「直後でジェガンが爆発しますが、爆装したままだったミサイルポッドが原因になっている」とのご指摘が併記されていました。
たしかに「爆装」しているのがそのジェガンのことだと、直後の「言わんこっちゃない」に繋がるんですよね。
やっぱり「爆装」なんだろうか。
言葉(というか漢字)で、あのシーンの見方がちょっと変わってくるな。
2022年10月28日 さらに追記
はい、終了。
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) October 28, 2022
当時、ブログ記事をフォローしてくれた方はスミマセン……我ながら良い着想だと思ったんだけどなー。 pic.twitter.com/zOrnNkYfIV

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