富野監督の「人類観」に対する、押井監督と平井和正さん評の違い
どうも。昨日、約2か月ぶりに記事を更新したと思ったら、今度は連日更新。
忘れていなければ、たぶん明日も更新する。
さて昨日、富野監督ファン界隈のツイッターは、押井守監督の『【連載エッセイ】押井守の映画50年50本』の「1988年『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』編」で、少し盛り上がったかと思います。
この文章は、8月に発売予定の立東舎『押井守の映画50年50本』の連動企画で、同社のHPに公開されたもの。
Amazonの商品説明読むと、同書では逆シャア以外に『2001年宇宙の旅』『わらの犬』『ブレードランナー』なんかが紹介されているようですね。
でも立東舎さんHPにある『【連載エッセイ】押井守の映画50年50本』では、1968年の分もアップされていて、そこでは『2001年宇宙の旅』ではなく『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』(別名『ウエスタン』)が選ばれているけれど(笑)。
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今回のエッセイで富野ファンが衝撃を受けたのは、なんと言っても「宮さん、よく富野さんに電話しておしゃべりしていたからね」ではないでしょうか(個人的にはほかに、ぼくは知らなかった伊藤さん・高橋さんの関係に流れ弾が飛んでいるところも面白かった)。
あと、そうだなあ、「(劇中のセリフの多さは)僕どころじゃないよ」と笑い交じりにおっしゃっているけれど、いやいや『御先祖様万々歳!』を作った方が何を……とは(笑)。
さて熱心な富野監督ファン、あるいは押井監督ファンの中には、押井監督が『逆襲のシャア』について触れる(しかも褒める)ことについては、知っていた方もおられるかと思います。
今回のエッセイでも記述があるように押井監督は、庵野監督などが手掛けた同人誌『逆襲のシャア友の会』のほか、『アニメージュ』誌上でも俎上にあげているし。2人で対談もしています。
『ガンダム』は観ています。特に『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(88年)は、かなりしつこく観ました。
あれは特筆すべき作品ですね。(91年4月号)
持ってないから確認できないけれど、この文章はたぶん『すべての映画はアニメに変わる』に収録されているんじゃないかな。違ったらすまん。
![すべての映画はアニメになる[押井守発言集] (アニメージュ叢書) すべての映画はアニメになる[押井守発言集] (アニメージュ叢書)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/5178NRC684L._SL160_.jpg)
同じ『アニメージュ』の誌上で対談したのは93年、『Vガンダム』が始まった頃。
互いの作品、Vガンとパト2についてや、TVアニメと劇場版アニメの違いなどについて語り合っております。
個人的には、劇場版『パトレイバー』と逆シャアって、見た時期が近かったこともあって、逆シャアにどうしても「時代遅れ」を感じてしまったんだよね。
大昔にもこのブログで書いた記憶あるけれど、OSの概念の導入とか、「CGと分かって良いところでCGを使う」手法とか、『機動警察パトレイバー the movie』って衝撃的だった。
ホラ、逆シャアのCGコロニーのシーン、やっぱり違和感あるでしょ?
最後のMS同士のどつきあいとかさ…だから当時の逆シャアって、ぼくは「劇場版パトに比べると古臭いけれど、でも好きなんだ!」って作品だったの。
だから押井さんが逆シャアを激賞していると、知ってはいたけれどちょっと不思議な感じもします。
ちなみに逆に、富野監督がトークショーやインタビューなどで、押井監督に触れたのは……
あるイベントで、インタビュアーから・実写パトや庵野ゴジラなど、アニメ監督が実写作品を手がけていることについて聞かれたことがあります。ノーコメントにしているけれど……
別のイベントでは、明言していないけれど『イノセンス』を否定的に言っている。そのくらい?
さて押井監督が逆シャアを「日本のロボットアニメが到達したひとつの極点」「たとえガンダムやロボットアニメに興味がなくても、ドラマとして、人物として鑑賞できる作品のはず」とまでプッシュする理由の1つは、
「富野さんはそこまで人類に絶望しているんだなって分かったから」と説明されています。
シャア=富野監督、というのは今までも見られる説ですが(ちなみに明日紹介する予定ですが、吉田健一さんも同じことを語られています)。
シャアが富野さんの本音を代弁して、人間なんてダメだ! 粛清してやる! とアクシズを落とすわけですね。
しかもここからはぼくの推測ですが、おそらく・富野監督っぽくいうと「やってみせる」ことが重要で、結果はあまり問わない、と。
まあマスクもかぶってないし・鉄仮面と違ってむき出し。サイコフレームの奇跡は「物語を終結させるための方便」で、見る限り・やっぱり力点は「アクシズ落としたる!」にあると感じるし。
だから富野監督のむき出し感がある。押井さんの書いてらっしゃることも分かる。
蛇足ですが、例の有名な庵野監督による「パンツはいてる・はいてない」も、ここら辺のことじゃないのかな。
さてここで、自らの作品を「人類ダメ小説」と称していたSF作家がいます。平井和正さんっていうんですけれど。

今は亡き平井さんの富野監督評が、今回の押井さんとは真逆だったので、ご紹介しておきます。
ま、発言の時期が違うからね。平井さんの発言は、イデオンの頃だから。
(ブログ主注・平井作品が絶対的な善悪構造であるのに対して)富野さんの場合にはそれが相対的な構造になっている。富野さんは心優しいわけですよね、人間を信じている。私のようにとことん冷酷になれないんですね。
ですから富野作品の中には、徹底した悪人は出てこないです。(ラポート㈱『伝説巨神イデオン大事典』43-44P)
これも、納得出きるところですよね。
富野監督、人間を信じたり、絶望してみたり。波のようにその時期によってたゆたっているのか。
それかイデオンの頃には信じていたけれど、その後闇落ちしたのか(笑)。
ただまあ、∀は人類が一回絶滅してからの話だったり、G-レコもクンタラがいたり技術がタブー化しているところを見ると(しかも富野監督の中では∀より後年設定)、人類への絶望感は根深そうだな、とは感じます。
こう書くと、人間賛歌と人類絶望が同居しているな、富野作品。
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忘れていなければ、たぶん明日も更新する。
さて昨日、富野監督ファン界隈のツイッターは、押井守監督の『【連載エッセイ】押井守の映画50年50本』の「1988年『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』編」で、少し盛り上がったかと思います。
この文章は、8月に発売予定の立東舎『押井守の映画50年50本』の連動企画で、同社のHPに公開されたもの。
Amazonの商品説明読むと、同書では逆シャア以外に『2001年宇宙の旅』『わらの犬』『ブレードランナー』なんかが紹介されているようですね。
でも立東舎さんHPにある『【連載エッセイ】押井守の映画50年50本』では、1968年の分もアップされていて、そこでは『2001年宇宙の旅』ではなく『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』(別名『ウエスタン』)が選ばれているけれど(笑)。
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- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
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今回のエッセイで富野ファンが衝撃を受けたのは、なんと言っても「宮さん、よく富野さんに電話しておしゃべりしていたからね」ではないでしょうか(個人的にはほかに、ぼくは知らなかった伊藤さん・高橋さんの関係に流れ弾が飛んでいるところも面白かった)。
あと、そうだなあ、「(劇中のセリフの多さは)僕どころじゃないよ」と笑い交じりにおっしゃっているけれど、いやいや『御先祖様万々歳!』を作った方が何を……とは(笑)。
さて熱心な富野監督ファン、あるいは押井監督ファンの中には、押井監督が『逆襲のシャア』について触れる(しかも褒める)ことについては、知っていた方もおられるかと思います。
今回のエッセイでも記述があるように押井監督は、庵野監督などが手掛けた同人誌『逆襲のシャア友の会』のほか、『アニメージュ』誌上でも俎上にあげているし。2人で対談もしています。
『ガンダム』は観ています。特に『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(88年)は、かなりしつこく観ました。
あれは特筆すべき作品ですね。(91年4月号)
持ってないから確認できないけれど、この文章はたぶん『すべての映画はアニメに変わる』に収録されているんじゃないかな。違ったらすまん。
![すべての映画はアニメになる[押井守発言集] (アニメージュ叢書) すべての映画はアニメになる[押井守発言集] (アニメージュ叢書)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/5178NRC684L._SL160_.jpg)
すべての映画はアニメになる[押井守発言集] (アニメージュ叢書)
- 作者: 押井 守
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2004/03/27
- メディア: 単行本
同じ『アニメージュ』の誌上で対談したのは93年、『Vガンダム』が始まった頃。
互いの作品、Vガンとパト2についてや、TVアニメと劇場版アニメの違いなどについて語り合っております。
個人的には、劇場版『パトレイバー』と逆シャアって、見た時期が近かったこともあって、逆シャアにどうしても「時代遅れ」を感じてしまったんだよね。
大昔にもこのブログで書いた記憶あるけれど、OSの概念の導入とか、「CGと分かって良いところでCGを使う」手法とか、『機動警察パトレイバー the movie』って衝撃的だった。
ホラ、逆シャアのCGコロニーのシーン、やっぱり違和感あるでしょ?
最後のMS同士のどつきあいとかさ…だから当時の逆シャアって、ぼくは「劇場版パトに比べると古臭いけれど、でも好きなんだ!」って作品だったの。
だから押井さんが逆シャアを激賞していると、知ってはいたけれどちょっと不思議な感じもします。
ちなみに逆に、富野監督がトークショーやインタビューなどで、押井監督に触れたのは……
あるイベントで、インタビュアーから・実写パトや庵野ゴジラなど、アニメ監督が実写作品を手がけていることについて聞かれたことがあります。ノーコメントにしているけれど……
別のイベントでは、明言していないけれど『イノセンス』を否定的に言っている。そのくらい?
さて押井監督が逆シャアを「日本のロボットアニメが到達したひとつの極点」「たとえガンダムやロボットアニメに興味がなくても、ドラマとして、人物として鑑賞できる作品のはず」とまでプッシュする理由の1つは、
「富野さんはそこまで人類に絶望しているんだなって分かったから」と説明されています。
シャア=富野監督、というのは今までも見られる説ですが(ちなみに明日紹介する予定ですが、吉田健一さんも同じことを語られています)。
シャアが富野さんの本音を代弁して、人間なんてダメだ! 粛清してやる! とアクシズを落とすわけですね。
しかもここからはぼくの推測ですが、おそらく・富野監督っぽくいうと「やってみせる」ことが重要で、結果はあまり問わない、と。
まあマスクもかぶってないし・鉄仮面と違ってむき出し。サイコフレームの奇跡は「物語を終結させるための方便」で、見る限り・やっぱり力点は「アクシズ落としたる!」にあると感じるし。
だから富野監督のむき出し感がある。押井さんの書いてらっしゃることも分かる。
蛇足ですが、例の有名な庵野監督による「パンツはいてる・はいてない」も、ここら辺のことじゃないのかな。
さてここで、自らの作品を「人類ダメ小説」と称していたSF作家がいます。平井和正さんっていうんですけれど。

日本SF傑作選4 平井和正 虎は目覚める/サイボーグ・ブルース (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 平井 和正
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/02/06
- メディア: 文庫
今は亡き平井さんの富野監督評が、今回の押井さんとは真逆だったので、ご紹介しておきます。
ま、発言の時期が違うからね。平井さんの発言は、イデオンの頃だから。
(ブログ主注・平井作品が絶対的な善悪構造であるのに対して)富野さんの場合にはそれが相対的な構造になっている。富野さんは心優しいわけですよね、人間を信じている。私のようにとことん冷酷になれないんですね。
ですから富野作品の中には、徹底した悪人は出てこないです。(ラポート㈱『伝説巨神イデオン大事典』43-44P)
これも、納得出きるところですよね。
富野監督、人間を信じたり、絶望してみたり。波のようにその時期によってたゆたっているのか。
それかイデオンの頃には信じていたけれど、その後闇落ちしたのか(笑)。
ただまあ、∀は人類が一回絶滅してからの話だったり、G-レコもクンタラがいたり技術がタブー化しているところを見ると(しかも富野監督の中では∀より後年設定)、人類への絶望感は根深そうだな、とは感じます。
こう書くと、人間賛歌と人類絶望が同居しているな、富野作品。
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誰も語らなかったジブリを語ろう (TOKYO NEWS BOOKS)
- 作者: 押井 守
- 出版社/メーカー: 東京ニュース通信社
- 発売日: 2017/10/20
- メディア: 単行本

やっぱり友だちはいらない。 (TOKYO NEWS BOOKS)
- 作者: 押井 守
- 出版社/メーカー: 東京ニュース通信社
- 発売日: 2017/12/19
- メディア: 単行本

この記事へのコメント
お久しぶりです。コメントありがとうございます。後で読ませていただきます。