春日さんの「『ガンダム』は立派な剣劇アクションだ!」を聞いて、『Gレコ』のデレンセン撃墜シーンを思い出す
どうもお久しぶりです。もう。前回更新から随分と間があいた…
2か月ほどの前の話になってしまいますが、TBSラジオ『アフター6ジャンクション』で、時代劇研究家の春日太一さんが、ガンダムと殺陣の関連について話していました。
タイトルは「『ガンダム』は立派な剣劇アクションだ! 特集」。
この場合の「ガンダム」というのは、勿論富野ガンダムのこと。
富野ガンダムが好きで、時代劇も好きなぼくは、興味深く聞きました。
説明不要でしょうが、殺陣とは時代劇=チャンバラにおける、チャンチャンバラバラの部分です。
ガンダムと殺陣の密接な関係については、以前からいろんな人が語っていたと思います。
何かのガンダム本で。
ファーストガンダムでは殺陣の魅力が溢れていたが、『Z』では殺陣が少なくなったのが、戦闘シーンの魅力が少なくなった原因のひとつだと読んだ記憶がありますね…
確かに『Z』ではあまり殺陣のシーンって思い浮かばないです。
個人的には、ジェリドがバイアランの隠し腕でガザCを一刀両断したシーンは、それこそ居合切りみたいな感じがして凄い好きなのですが(その様子をモニターで見ていたシロッコが、「ジェリドねぇ…」と小馬鹿にしたように呟くのも好き。島田さん!)
ただ殺陣で言えば、『Z』が駄目でもその後、『逆シャア』も『ブレン』もあるし。
『アフター6ジャンクション』では殺陣の魅力から始まって、富野作品がどのように殺陣を描いているのか、非常に興味深い内容で進行しました。
ガンダム初心者向けの放送、それと時代劇も初心者向き内容だったのかな。
だから素晴らしい殺陣がどのような要素で構成されているのか、から説明がありました。動と静だったり、構えだったりと、そこらへんの説明。
ちなみに一昨年放送されたTV番組『たけしのこれがホントのニッポン芸能史』時代劇編では、殺陣が素晴らしい俳優・作品として、
『剣客商売』藤田まこと
『椿三十郎』三船敏郎(ラストの決闘なんて、まさに「静と動」だよなあ)
『座頭市物語』勝新太郎(子どもの頃、座頭市の殺陣を見た時は、他の時代劇と違うタイプでビックリした記憶がある)
『桃太郎侍』高橋英樹(ゲストだったから、あげないわけにはね)
の4作品(人)があげられていました。
ぼくは必殺シリーズが大好きですが、藤田まことさんの殺陣をそんなふうに見たことはなかったな。
必殺シリーズの中では、ぼくは田村高廣さんの殺陣が好きでした。すごく華があるように見えて。まあ、殺し屋の殺陣に華があるのがいいのかは、分かりませんけれども……
さて話を「アフター6ジャンクション」に戻して、この放送を聞いて改めて思ったのは。
モビルスーツも「やっぱりキャラクターなんだな」ということ。
春日さんは、宇宙での戦いでは本来不必要なはずの「重心をおろす」などの動作をモビルスーツがする、それは富野監督が殺陣での見栄えを重視しているから、と指摘しています。
本当にその通りですよね。
モビルスーツはよく人型兵器とかリアルロボットの先駆けとか・そういう文脈で語られることが多いですが、今回の「ガンダムと殺陣」の密接な関係の話を聞いて、「やっぱりモビルスーツもキャラクターなんだ」と強く再確認しました。
ガンダムで殺陣というと、おそらく真っ先に出てくるガンダムVSグフとか、あの時の両機って機械じゃないですよね。「ああいうキャラクター」ですよ。
春日さんの話はとても興味深く、彼のTwitter をフォローしている人なら知っていると思いますが(ぼくはしてないけれど)、春日さんは富野監督にインタビューもしています。
その書籍は、来年1月に発行される『時代劇入門』(?)に掲載されるらしいです。
さてそのインタビューの話題になって、興味深い話が。
そのインタビューの中で富野監督が、次のようなことを語っていたと春日さんは言っています。
殺陣の利点として距離が近い。銃だと距離が離れているから、感情が遠い。相手を殺す時も感情が弱い。
刀で斬るとなると、直接斬りに来るから距離が近くなる。相手を斬る時の重みや痛みも伝わる。
ガンダムに多いけど、斬り合いながら台詞を言い合う。近いからリアルにできる。斬る側・斬られる側のドラマがより濃厚に伝わってくる。
この富野監督の言を逆に考えると、あまり感情を乗せたシーンにしたくない時は、ライフルでそっけなく撃墜すれば良いことになりますよね。
例えば春日さんはこの放送で『逆シャア』を何回も例に挙げていますが。
ギュネイの撃墜シーンは、まさに逆の表現だったと思います。νガンダムの武装を放棄するのをダミーにして、あっさり狙撃・撃墜すると言う。そこにはアムロとギュネイの会話はいっさいない。
そしてもう1つ、この春日さんが紹介した富野監督の言葉で思い出すのが、『Gレコ』におけるベルリとデレンセンの・最後の戦闘シーンですよね。
あの戦闘シーンもずっとライフルの打ち合いになってて、最後にサーベルを使える間合いに入るんですけど。
結局最後は、至近距離でライフルを撃ってデレンセンを撃破する。
そしてデレンセンの最後の攻撃をかわすGセルフの挙動によって、2人は互いの存在を認識するわけです。
もし、例えばサーベルで斬り合ったりしていたら、相手が誰であるか気付いたかもしれない。
もちろん作劇している人間は・キャラクターに「気づかせない」こともできるわけですが、するとフィルムに違和感が漂うかもしれない。視聴者が「これだけ間近で斬り合っていたら、気づくんじゃね? 挙動とか、ミノフスキー粒子があっても、この距離なら無線聞こえるんじゃね?」とか。
だからこそ、作劇上・あそこはライフルの打ち合いでなければ駄目だったのだと、今回の放送を聞いて思います。
今回の放送では、ファーストだけではなく『逆シャア』『 F91』も語られています。
ガンダムを知らない人向けだからこそ、 F91の分身は・何だか早い動きだから残像が見える、みたいな説明になっていたので、塗装が剥がれて…の一言の説明があればもっと良かったような気もしますが……
それは五月蠅いファンの難癖だとして。
今回の放送で、1つだけ注意しなければならない点があります。
春日さんが行った富野インタビューの中で、富野監督の好きな剣豪が佐々木小次郎であることが判明したそうです。
それで、春日さんはガンダムが背中にサーベルを背負っているのは、佐々木小次郎のイメージから来ているのではないかと推測しています。
この仮説は非常に面白いし、だからその通りでいいのではないか、とも思うのですが。
しかしぼくが知る限りでは、ガンダムのデザインは大河原さんがデザインして、安彦さんがクリンナップしたものです。
その前に、富野監督のラフ案がありますが (あのなんか悪役顔したやつ)。
そのラフには、まだ作品名が「ガンボーイ」だったこともあり、サーベルのサの字も見当たりません。
ですから、「ガンダムのサーベルが背中にマウントされているのは、富野監督が好きな佐々木小次郎のイメージから来ている」という仮説は面白いのですが、少なくともぼくの手持ちの資料では実証されませんでした。
来年発売されるという春日さんの本に、その事について富野監督の言及があれば、新たなエピソードとなると思います。
もちろん、大河原さんは色々なところで「ガンダムのデザインにはいろんな人の意見が入っている」旨を公言しているので、富野監督の意見が入っている可能性もあります。
ただ例えば、大河原さんデザインのグフの初期案を見ると、それこそ佐々木小次郎の刀を想像させるような、背中にサーベルをマウントしているデザインが描かれています。

※Googleで「グフ 初期案」で画像検索した結果の画面
これの方が、まんま小次郎だな。ちなみにぼくは、小次郎というと「あうー」とか唸る小次郎より、高倉健小次郎を思い出します。
話逸れた。
なので、ガンダムのサーベルを背中にマウントさせたのは、大河原さんじゃないのかなと個人的には思うのですが。
繰り返しますが、仮説としてはすごい面白いので、これが事実だったら事実で面白いと思います。
ちなみこのインタビューでは富野監督、『逆シャア』の時には1回ビームライフルを撃ったらもう撃たないと自己規制していた、という話も聞いたそうです。
なお、9月20日現時点で、この回のアフター6ジャンクションはアプリ「ラジオクラウド」を使って聞くことができます。7月17日放送回です。
興味のある方は是非。
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2か月ほどの前の話になってしまいますが、TBSラジオ『アフター6ジャンクション』で、時代劇研究家の春日太一さんが、ガンダムと殺陣の関連について話していました。
タイトルは「『ガンダム』は立派な剣劇アクションだ! 特集」。
この場合の「ガンダム」というのは、勿論富野ガンダムのこと。
富野ガンダムが好きで、時代劇も好きなぼくは、興味深く聞きました。
殺陣の魅力
説明不要でしょうが、殺陣とは時代劇=チャンバラにおける、チャンチャンバラバラの部分です。
ガンダムと殺陣の密接な関係については、以前からいろんな人が語っていたと思います。
何かのガンダム本で。
ファーストガンダムでは殺陣の魅力が溢れていたが、『Z』では殺陣が少なくなったのが、戦闘シーンの魅力が少なくなった原因のひとつだと読んだ記憶がありますね…
確かに『Z』ではあまり殺陣のシーンって思い浮かばないです。
個人的には、ジェリドがバイアランの隠し腕でガザCを一刀両断したシーンは、それこそ居合切りみたいな感じがして凄い好きなのですが(その様子をモニターで見ていたシロッコが、「ジェリドねぇ…」と小馬鹿にしたように呟くのも好き。島田さん!)
ただ殺陣で言えば、『Z』が駄目でもその後、『逆シャア』も『ブレン』もあるし。
『アフター6ジャンクション』では殺陣の魅力から始まって、富野作品がどのように殺陣を描いているのか、非常に興味深い内容で進行しました。
ガンダム初心者向けの放送、それと時代劇も初心者向き内容だったのかな。
だから素晴らしい殺陣がどのような要素で構成されているのか、から説明がありました。動と静だったり、構えだったりと、そこらへんの説明。
ちなみに一昨年放送されたTV番組『たけしのこれがホントのニッポン芸能史』時代劇編では、殺陣が素晴らしい俳優・作品として、
『剣客商売』藤田まこと
『椿三十郎』三船敏郎(ラストの決闘なんて、まさに「静と動」だよなあ)
『座頭市物語』勝新太郎(子どもの頃、座頭市の殺陣を見た時は、他の時代劇と違うタイプでビックリした記憶がある)
『桃太郎侍』高橋英樹(ゲストだったから、あげないわけにはね)
の4作品(人)があげられていました。
ぼくは必殺シリーズが大好きですが、藤田まことさんの殺陣をそんなふうに見たことはなかったな。
必殺シリーズの中では、ぼくは田村高廣さんの殺陣が好きでした。すごく華があるように見えて。まあ、殺し屋の殺陣に華があるのがいいのかは、分かりませんけれども……
モビルスーツもやはり「キャラクター」だ
さて話を「アフター6ジャンクション」に戻して、この放送を聞いて改めて思ったのは。
モビルスーツも「やっぱりキャラクターなんだな」ということ。
春日さんは、宇宙での戦いでは本来不必要なはずの「重心をおろす」などの動作をモビルスーツがする、それは富野監督が殺陣での見栄えを重視しているから、と指摘しています。
本当にその通りですよね。
モビルスーツはよく人型兵器とかリアルロボットの先駆けとか・そういう文脈で語られることが多いですが、今回の「ガンダムと殺陣」の密接な関係の話を聞いて、「やっぱりモビルスーツもキャラクターなんだ」と強く再確認しました。
ガンダムで殺陣というと、おそらく真っ先に出てくるガンダムVSグフとか、あの時の両機って機械じゃないですよね。「ああいうキャラクター」ですよ。
春日さんの話はとても興味深く、彼のTwitter をフォローしている人なら知っていると思いますが(ぼくはしてないけれど)、春日さんは富野監督にインタビューもしています。
その書籍は、来年1月に発行される『時代劇入門』(?)に掲載されるらしいです。
さてそのインタビューの話題になって、興味深い話が。
富野監督が考える殺陣の効能
そのインタビューの中で富野監督が、次のようなことを語っていたと春日さんは言っています。
殺陣の利点として距離が近い。銃だと距離が離れているから、感情が遠い。相手を殺す時も感情が弱い。
刀で斬るとなると、直接斬りに来るから距離が近くなる。相手を斬る時の重みや痛みも伝わる。
ガンダムに多いけど、斬り合いながら台詞を言い合う。近いからリアルにできる。斬る側・斬られる側のドラマがより濃厚に伝わってくる。
この富野監督の言を逆に考えると、あまり感情を乗せたシーンにしたくない時は、ライフルでそっけなく撃墜すれば良いことになりますよね。
例えば春日さんはこの放送で『逆シャア』を何回も例に挙げていますが。
ギュネイの撃墜シーンは、まさに逆の表現だったと思います。νガンダムの武装を放棄するのをダミーにして、あっさり狙撃・撃墜すると言う。そこにはアムロとギュネイの会話はいっさいない。
だからデレンセンはライフルで殺される
そしてもう1つ、この春日さんが紹介した富野監督の言葉で思い出すのが、『Gレコ』におけるベルリとデレンセンの・最後の戦闘シーンですよね。
あの戦闘シーンもずっとライフルの打ち合いになってて、最後にサーベルを使える間合いに入るんですけど。
結局最後は、至近距離でライフルを撃ってデレンセンを撃破する。
そしてデレンセンの最後の攻撃をかわすGセルフの挙動によって、2人は互いの存在を認識するわけです。
もし、例えばサーベルで斬り合ったりしていたら、相手が誰であるか気付いたかもしれない。
もちろん作劇している人間は・キャラクターに「気づかせない」こともできるわけですが、するとフィルムに違和感が漂うかもしれない。視聴者が「これだけ間近で斬り合っていたら、気づくんじゃね? 挙動とか、ミノフスキー粒子があっても、この距離なら無線聞こえるんじゃね?」とか。
だからこそ、作劇上・あそこはライフルの打ち合いでなければ駄目だったのだと、今回の放送を聞いて思います。
1つだけ留意点、ガンダムのビームサーベルマウントは佐々木小次郎がイメージ、は面白いけれど…
今回の放送では、ファーストだけではなく『逆シャア』『 F91』も語られています。
ガンダムを知らない人向けだからこそ、 F91の分身は・何だか早い動きだから残像が見える、みたいな説明になっていたので、塗装が剥がれて…の一言の説明があればもっと良かったような気もしますが……
それは五月蠅いファンの難癖だとして。
今回の放送で、1つだけ注意しなければならない点があります。
春日さんが行った富野インタビューの中で、富野監督の好きな剣豪が佐々木小次郎であることが判明したそうです。
それで、春日さんはガンダムが背中にサーベルを背負っているのは、佐々木小次郎のイメージから来ているのではないかと推測しています。
この仮説は非常に面白いし、だからその通りでいいのではないか、とも思うのですが。
しかしぼくが知る限りでは、ガンダムのデザインは大河原さんがデザインして、安彦さんがクリンナップしたものです。
その前に、富野監督のラフ案がありますが (あのなんか悪役顔したやつ)。
そのラフには、まだ作品名が「ガンボーイ」だったこともあり、サーベルのサの字も見当たりません。
ですから、「ガンダムのサーベルが背中にマウントされているのは、富野監督が好きな佐々木小次郎のイメージから来ている」という仮説は面白いのですが、少なくともぼくの手持ちの資料では実証されませんでした。
来年発売されるという春日さんの本に、その事について富野監督の言及があれば、新たなエピソードとなると思います。
もちろん、大河原さんは色々なところで「ガンダムのデザインにはいろんな人の意見が入っている」旨を公言しているので、富野監督の意見が入っている可能性もあります。
ただ例えば、大河原さんデザインのグフの初期案を見ると、それこそ佐々木小次郎の刀を想像させるような、背中にサーベルをマウントしているデザインが描かれています。

※Googleで「グフ 初期案」で画像検索した結果の画面
これの方が、まんま小次郎だな。ちなみにぼくは、小次郎というと「あうー」とか唸る小次郎より、高倉健小次郎を思い出します。
話逸れた。
なので、ガンダムのサーベルを背中にマウントさせたのは、大河原さんじゃないのかなと個人的には思うのですが。
繰り返しますが、仮説としてはすごい面白いので、これが事実だったら事実で面白いと思います。
ちなみこのインタビューでは富野監督、『逆シャア』の時には1回ビームライフルを撃ったらもう撃たないと自己規制していた、という話も聞いたそうです。
なお、9月20日現時点で、この回のアフター6ジャンクションはアプリ「ラジオクラウド」を使って聞くことができます。7月17日放送回です。
興味のある方は是非。
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